女子サッカーの現実を骨太に描く『さよなら私のクラマー』

ウイングとして圧倒的な才能を持つ少女・周防すみれは、中学時代のライバルだった曽志崎緑とともに、埼玉県立蕨青南高校に入学した。

そこは「ワラビーズ」と周囲に揶揄される弱小チーム。

ところが、そのチームには周防と曽志崎以外にも、才能をもった少女が入部していた。少女の名は恩田希。中学時代は男子サッカー部に所属していたため、無名のプレイヤーだったが、その才能は本物だった。

さらに、かつて女子サッカー日本代表のレジェンドとして知られた能見奈緒子をコーチに迎え、ワラビーズは最初の一歩を踏み出した。

『四月は君の噓』の新川直司が贈る新作。

というわけで『さよなら私のクラマー』を紹介します!

みどころ

1)W杯を制した日本の女子サッカー

2011年、FIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会。女子サッカー日本代表のなでしこジャパンが、快挙を成し遂げました。決勝戦でアメリカ代表と激突し、2-2。PK戦を3-1で制し、なんとあのW杯で優勝したのです。

ところが、日本の女子サッカーの環境はいまだに良いとは言えず。収入面をはじめ、色々な苦労がしばしばTVでも取り上げられています。本作でテーマとしたのは、まさにその女子サッカーの環境について。

弱小高校サッカーチームに才能を持った選手が入部し、やがてジャイアントキリングを興していくという王道のストーリーですが、女子サッカーを題材にすることで、上記の問題点を浮き彫りにしようという狙いがあるようです。

例えば、こんなセリフ。

女子サッカーに未来はあるのか? かつて世界王者となった女子サッカーを取り巻く環境はどうだ。純粋なプロクラブはいくつある? いくら稼げる? 環境改善に協会は何をしてくれた? 「プロを目指せ」とガキどもに言えるか? スーパースターが1人いたところで、何も変わらないのは知ってるだろ。

この根深いテーマを、漫画というメディアを使って、どう扱っていくのか。『ヒカルの碁』『ちはやふる』『3月のライオン』のように、漫画によってムーブメントを起こせるのか。そういった文化的な視点での楽しみがあります。

2)戦術描写も本格派

単純にサッカー漫画としても、戦術がしっかり描かれ、とても本格派。サッカーファンの目や知識も増えてきて、最近はサッカー漫画もリアル路線じゃないと成り立たなくなってきてるのかな?

閉塞感ただようチームの雰囲気に個人技で風穴をあけたり。今までチームメイトに恵まれず個人技に頼らざるを得なかった選手が初めてチームプレーの面白さに目覚めたり。

それが女子サッカーというところがとっても新鮮。

弱小高校サッカーチームを周防すみれ、曽志崎緑、恩田希の奇才3名が盛り立てていくわけですが、それぞれ異なる才能が互いに影響を与え合って成長していく様を描きます。

最初の試合は強豪高校との練習試合。なんと21対0で負けるというしんどい展開。

これもコーチの狙い通りで、大敗を味わわせるためでした。そんな展開でも心折れず、1点をもぎとろうとする奇才3名。今後、少しずつ強くなっていって、強豪を倒していくのが楽しみになってきます。

女子サッカーを骨太に描く、本当に新鮮な作品となっています。

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