緻密な画力!遊牧民の結婚・生活・文化を描く『乙嫁語り』

20歳の娘・アミルが嫁いだ相手は、若干12歳の少年・カルルク。ものの考え方が少しずれているけど、狩りが上手くて、まっすぐ一生懸命に生きているアミルと、幼い割にしっかりとしたカルルクは、年の差を超えて惹かれ合っていく。

出典『乙嫁語り』

ところがアミルの一族が「アミルを嫁に出したのは手違いだった。お返しいただきたい」と何やら不穏な雰囲気に――?

英国人のヘンリー・スミスは長らく滞在した居候先を離れ、カラザそしてアンカラへと旅に出かけ、タラスと出会う。タラスは嫁いだ先で夫を亡くし、その弟の嫁となるのを繰り返し、あれよあれよと5人と結婚。最後の5男も病気で亡くなり、未亡人となっていた。タラスの義母は、タラスを嫁にもらってくれないかとスミスに頼んで――?

アミルの友人パリヤにとって、目下のところ気になるのは結婚相手。率直すぎる性格が災いしてか、なかなか縁談がまとまらない日々。そんなパリヤにも最近、気になる相手ができた。ところが、苦手な布支度は遅々として進まないし、友達も少なく、自分の気持ちは上手に伝えられない。八方ふさがりのパリヤに、突破口はあるのだろうか――?

舞台は19世紀の中央アジア・コーカサス地域。独特な結婚の風習をはじめとしたシルクロードの生活文化を微細に描く。馬の背に乗り弓を構え、悠久の大地に生きる人々の物語。

カルルクとアミル(出典『乙嫁語り』)

ということで『乙嫁語り』を紹介します。「マンガ大賞2014」第1位に輝いた作品。そのまま文化資料にもなりそうなリアルな生活風習、文化が描かれます。

みどころ

① 悠大な土地で雄大に生き抜く人々

主役は乙嫁たち。それぞれの結婚模様を描きます。しかし、単純に恋愛物語かというとそれだけでなく、いずれの乙嫁たちにも個性のほかに、それぞれの生活、文化、しきたりがあってすべてが思い通りにはいかない。19世紀の中央アジア・コーカサス地域は、ロシアの圧迫を受け始めた地域。暮らしは厳しいが、その中で悠大に生き抜く人々の器量を描いています。

出典『乙嫁語り)

恋愛物語としては、遊牧民のアミルと定住民のカルルクが年の差を超えて、習慣の違いを超えて、仲睦まじくする様子がグッときます。アミルは狩りが上手くて生きる力に満ち溢れていますが、時に大胆すぎて細かい生活のしきたりからはズレている一面も。それでも、必死に、カルルクが風邪を引けば周りがびっくりするくらい心配したりしながら、この雄大な土地で飄々と生きている。ものすごく好感の持てるキャラクターとなっています。

しかし、そんなアミルも実は政略結婚のために、カルルクの下へ嫁に出されていました。そのきな臭い事実がのちに大きな問題へと発展します。この時代、この地域の結婚観というものをつぶさに伝えてくれて面白いですね。

出典『乙嫁語り』

② 文化資料になりそうな描写

民族ごとの文化や風習をとにかく緻密に描いています。例えば、狩りの風景。ピンと張り詰めた空気感が読んでいるこちらにもビンビンと伝わってきます。例えば、衣装や織物。この地域には乙嫁たちは花嫁修業として刺繍を学びます。母親から技術を受け継ぎ、やがて自分の子供にも引き継ぐ。そうやって作り上げられる織物の美しいこと!

刺繍の美しさ(出典『乙嫁語り』)

ほかにも、食、仕事、政治的背景、遊牧民の暮らしと、中央アジアの少し珍しい文化や風習に触れられます。とある地域には、結婚して子供のいる女性同士が「姉妹妻」という契りを交わす風習がありそうです。同じ夫を持つ妻として、子を持つ母として、相手の嫌がることは絶対にしない、陰で悪口も言わない、お互い以上に仲のいい相手は作らない。うれしい事も悲しい事も悩みも何でも話して、お互いの心の本当の理解者になる、一生の友達が「姉妹妻」。こうした話がしっかりと描かれるので、もうそのまま文化資料になりそうです。

食文化(出典『乙嫁語り』)

それでも好きな人を思う気持ちとかには、そんなに差がなかったりする。これは歴史や考古学が楽しい最大の理由だったりしますね。今も昔も考えていることはそう違わない。

中央アジアのちょっと変わった文化や風習、その従いながら、地に足の着いた恋物語が読みたい人にオススメです!

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