少年への想いは母性?それとも――?心理描写が圧倒的な『私の少年』

スポーツメーカーに勤める30歳、多和田聡子は夜の公園で12歳の美しい少年、早見真修と出会う。聡子は元恋人からの残酷な仕打ち、真修は家族の高圧と無関心。それぞれが抱える孤独に触れた二人は互いを必要なものと感じていく。この感情は母性? それとも――。(私の少年より)

ということで『私の少年』を紹介します。「マンガ大賞2017」第11位、心理描写が圧倒的な作品です。

みどころ

① 多和田聡子の人物像

「聡子」はスポーツメーカーに勤める30歳のOL。性格はまじめで、30歳という年齢を気にしながらも、持ち物や考え方が「若さ」とは少しずれてきている自分にも気づいている。

職場には大学時代の恋人がいて、別れたはずなのに馴れ馴れしく話しかけてくる。それに迷惑しながらも、どこかで「まだ」と期待していたら、ある時、新しい「恋人」を紹介する飲み会に不意打ちで参加させられてしまう。つまり、恋愛でうまくいかない姿が冒頭描かれる。荒々しい表現ではないものの、静かに傷ついているのがうかがえます。

そんなある夜、公園でサッカーの練習をしている美少女と見紛うような美少年と出会う。大学時代にフットサルをしていた聡子が何気なくボールさばきのコツを教えたことから、二人の関係が始まります。

出典『私の少年』

② 早見真修の人物像

真修は12歳の小学生。聡子にサッカーを教えてあげるといわれたとき、初めて食べたものがおいしかった時、「また遊びに来ようね」と聡子に言われたとき、ぱあっと目を輝かせて、聡子曰く「この顔が見れたら他はもうどうでもいいって思える」ような顔を見せます。

一方、親からは育児放棄されているようで、家庭事情は何やら複雑。一般的な小学生の「当たり前」よりも真修の「当たり前」は水準が低く、だからこそうれしいことには子供らしく純粋に、豊かに感情を表現します。

出典『私の少年』

③ 聡子の感情は、母性?それとも――

最初、聡子の真修への気持ちは何でもないものでした。ところが、真修が不審者に話しかけられていたり、サッカーのテストが上手くいかなかったと落ち込む姿を見たりするうちに、聡子の母性が動き始める。さらに真修と出会ったちょうどその頃、会社の元カレとの間でしんどい出来事があり、聡子自身落ち込んでいるところを真修に慰められたりします。

屈託のない真修に惹かれていく聡子。恋愛と呼べる感情ではないけれど、「彼氏はいるか?」と聞かれて一瞬真修のことが思い浮かんだり、完全にそうじゃないとも言えず。かといって、30歳の自分が踏み込むべきじゃないと、その複雑な気持ちを繊細に描いています。

例えば、元カレに振り回される状況を「呪縛」と呼んで

この呪いは解けない。
解けないなら、解かないけど、
昨日とは、一文字でも違う言葉を
一瞬でも違う朝を、一歩でも東に、
あなたがよく知る私についての100個
そのうちの10個だけでも
当てはまらないわたしになれ!

心の変化をちょっとした言動の変化に表して、言葉の変化で心の変化を描く。そうやって真修との関係性を表現していく。果たして、これは母性なのか、それとも――?

そんな圧倒的な心理描写が特長の作品となっています。

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